Optical Resolution
光学分割はラセミ体からエナンチオマーの一方を分離する方法です。最も一般的な光学分割法は,ラセミ体に光学分割剤を反応させてジアステレオマーを形成させ,ジアステレオマー間の物理的性質の差を利用して分割するジアステレオマー法です。分割剤としては,入手の容易な天然物が利用されています。例えば,酸を光学分割する場合はアルカロイド,塩基を光学分割する場合は酒石酸などが用いられ,それぞれジアステレオマーの塩を形成します。アルコールを光学分割する場合は,アルコールと無水フタル酸を反応させてハーフエステルに誘導した後,アルカロイドなどを用いて分割する方法が多用されています。
池上らはアミノ酸誘導体を用いるアルコールの分割法を報告しています1)。それによれば,1-オクチン-3-オールのラセミ体にN-p-トルエンスルホニルフェニルアラニルクロリドを反応させてエステルのジアステレオマーを生成させ,このエステルをエタノール—ヘキサンで再結晶を行い,理論収率64%(>99% de)でエステルを得ています。このエステルを加水分解することで(S)-1-オクチン-3-オール(>99% ee)を得ることができます。この方法は簡便で確実なアルコールの光学分割法として注目されています。
一方,触媒量の不斉源を使う光学分割も報告されています。石原らは酵素反応の利点を活かしながら種々の欠点を克服した人工小分子触媒Nα-(2,4,6-トリイソプロピルベンゼンスルホニル)-O-(tert-ブチルジフェニルシリル)-π-メチル-L-ヒスチジノールを開発し,ラセミアルコールのアシル化による速度論的分割に用いています2)。この触媒は1,2-シクロアルカンジオールだけでなく,鎖状1,2-ジオール,β-ヒドロキシカルボン酸,2-アミノアルコールなどの基質も効果的に速度論的分割を行うことができます。
また,椎名らは4-メトキシ安息香酸無水物(PMBA)とBirman型不斉触媒3)[(+)-ベンゾテトラミゾール, (+)-BTM]を用いたラセミアルコール,およびラセミカルボン酸の速度論的光学分割法を開発し,その有用性を報告しています4)。例えば,ラセミアルコールとアキラルカルボン酸の反応においては,まず,PMBAとカルボン酸から混合酸無水物が生成し,次いで触媒(+)-BTMにより,混合酸無水物とラセミアルコールの一方のエナンチオマーが優先的に反応し,光学活性エステルおよび光学活性アルコールが生成します。反応基質をラセミカルボン酸とアキラルアルコールに置き換えて本反応を行うと,カルボン酸の速度論的光学分割が効率的に進行し,光学活性エステルおよび光学活性カルボン酸を得ることができます。本反応の応用例として,消炎剤イブプロフェンの光学分割が報告されています。
酸の光学分割剤 / for Resolution of Acids
塩基の光学分割剤 / for Resolution of Bases
アルコール,チオールの光学分割剤 / for Resolution of Alcohols & Thiols
酸の光学分割剤 / for Resolution of Acids
塩基の光学分割剤 / for Resolution of Bases
アルコール,チオールの光学分割剤 / for Resolution of Alcohols & Thiols
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文献
2) K. Ishihara, Y. Kosugi, M. Akakura, J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 12212 [DOI].
3) V. B. Birman, X. Li, Org. Lett., 2006, 8, 1351 [DOI].
4) I. Shiina, K. Nakata, Tetrahedron Lett., 2007, 48, 8314 [DOI]; I. Shiina, K. Nakata, Y. Onda, Eur. J. Org. Chem., 2008, 5887 [DOI].
kdjoad0000000qgy






